保険見直し内容の要約
今後、合併、相互会社から株式会社への組織変更、国内外での業務提携、などによって、生命保険業界における勢力図が大きく変わってくる可能性があります。
生命保険会社の経営形態として、かつては保険事業に固有の相互会社が主流を占めていましたが、近年は、外資系の会社の日本市場進出ともあいまって、数の上では、株式会社形態の生命保険会社が、相互会社形態の生命保険会社を圧倒するようになり、生命保険業界は一大変貌を遂げつつあります。
とりわけ一九七五年時点における日本の生命保険会社二〇社のうちの多くが、この一〇年あまりの間に破綻したり、合併したりなど二〇〇九年五月現在における生命保険会社の一覧にその名を兄いだすことができなくなっている、という事実が、近年における生命保険業界の激動ぶりを示唆しています。
民間生命保険と競合する日本郵政公社の簡易保険と全国共済農業協同組合連合会などの生命共済も、一時の勢いを失っているとはいえ、生命保険業界にとって、けっして侮ることのできない存在であり、広義の生命保険市場における競争に、今後ますます拍車がかかるものと予測されます。
生命保険の契約状況の推移は、バブル経済崩壊の影響が顕在化して以後、長期的な不況が続くもとで低落傾向にあり、企業間の業績の格差が顕著になってきています。
保険事業においては、種類のいかんを問わず、保険料が徴収されることによって保険資金が蓄積されます。
そして、保険事故が発生した場合に、この保険資金から保険加入者に対して保険金が支払われます。
この保険資金が保険事業の運営にあたる、保険会社に代表される保険者と呼ばれる組織によって保持され管理される状況は、保険の種類や保険者の性格などによって異なります。
生命保険会社のもとには、次のような理由から巨額の保険資金が長期にわたって蓄積され、この資金がさまざまな経済分野において投資運用されます(表2-7参照)。
第一に、生命保険は人間の生死との関わりにおいて所得保障・所得再分配を行うことを基本的な役割としており、消費者と生命保険会社との間で取り結ばれる生命保険契約は、しばしば人間の一生あるいは数十年にわたる期間を対象にしていますから、生命保険は基本的に長期的な性格を持った仕組みにならざるをえません。
つまり生命保険資金は、生命保険事業が長期継続的な事業であることから、必然的に長期的な性格を有する資金となります。
第二に、生命保険加入者は、将来における保険金の受領に先立って、保険料を一疋期間にわたって前払いしなければなりません。
生命保険においては、多くの保険加入者が、通常、定期的に支払う保険料の一回ごとの金額は相対的に少額ですが、これを長年多数国にわたって支払い続けるので、結果的に保険会社には巨額の長期的な性格を有する資金が蓄積されていきます。
第三に、生命保険では長期間にわたって一疋額の保険料を支払う仕組みになっています。
死亡を条件にして保険金が支払われる生命保険(死亡保険)を例にとって簡単に説明してみましょう。
死亡率は年齢とともに上昇していきます。
つまり保険に加入し、年数が経過すればするほど、死亡率は上昇し、保険料は高くなります。
長期間にわたる生命保険契約において、年を迫って上昇していく死亡率に対応した自然保険料と呼ばれる保険料を毎年支払い続けていくことは、多くの人びとにとって、けっして容易なことではありません。
保険加入者の年齢が高くなると、保険料も高くなります。
ところが、保険加入者の所得・保険料負担能力は、必ずしも年齢とともに高くなっていくわけではありません。
それどころか保険加入者が被雇用者であれば、定年制の有無にかかわらず、いずれは退職しなければなりません。
退職すれば、所得も減少します。
労働・勤労に基づく所得・稼得はなくなります。
こうした状況のもとで年々上昇し続けていく保険料を払い続けていくことは、一般的に困難です。
そこで保険料払い込み期間全体を通じて支払う保険料を一定額に平均化して、長期間にわたる保険料の計画的・継続的な支払いが容易になるように保険料が計算されます。
これを平準保険料といいます。
平準保険料方式のもとでは、保険加入者は若年時には実際の死亡率に対応する自然保険料よりも多くの保険料を負担することになりますが、中高年期には相対的に保険料の負担が軽減されることになります。
こうして若年時に多めに負担される保険料分だけ、生命保険会社には保険資金が早く多く蓄積されていくことになります。
第四に、生命保険(死亡保険)においては、実際に死亡する被保険者の総数が短期間のうちに大きく変動することは、戦争や大震災の場合など、よほど異常な事態が発生しないかぎり、通常ありません。
したがって生命保険事業では、保険金支払いのために日常的に準備しておく現金や流動性・換金性の高い資産の比率を相対的に圧縮することが可能です。
それだけ保険資金の多くの部分を計画的・長期的に投資運用できるわけです。
その上、多くの保険加入者が負担する保険料が、現金の形で毎日継続して生命保険会社には払い込まれます。
このような特徴を有している資金を保持できる生命保険会社の経営姿勢が、あたかも保険資金を増殖させることが本来的・第一義的な業務であるかのような傾向にバブル経済期には陥りがちです。
保険会社としての本来的・第一義的な業務であるべきはずの経済的保障サービスの提供が、資金集めの手段に堕したかのような様相を呈するようになり、バブル経済の崩壊によって、多くの生命保険会社の経営が破綻することになりました。
巨額の長期的な性格を有する生命保険資金は、日本経済が高度成長を遂げていく過程で設備投資資金として、交通・運輸・通信、電力・ガス、造船、鉄鋼・金属、化学、建設・不動産など、長期資金を必要とする産業分野に重点的に貸し付けられるとともに、株式保有という形でも運用され、生命保険会社は、これらの企業との関係を緊密化し、旧財閥系の三井二二菱・住友の三大企業集団の再結成や金融系列集団の形成に深く関与してきました。
生命保険会社の企業への融資や株式の保有は、しばしば当該企業からの団体生命保険や企業年金保険などの契約の獲得と一体化した安定株主としてのものであり、もっぱら投資収益の獲得を目指しての投資行動とはいえませんでした。
こんなことからも生命保険会社の投資行動は保守的で、生命保険会社は「投資はしても経営には介入しない」サイレント・パートナーと呼ばれ、機関投資家としては、あまり高く評価されていませんでした。
有価証券への投資から生じる収益を主要な収益源としている法人を機関投資家といいます。
巨額の長期資金を保持している生命保険会社は代表的な機関投資家です。
ただ一九七〇年代頃までは生命保険会社の金融機関としての地位は相対的に低く、しばしば生命保険会社は、「融資の申し込みを受けるのは最後で、資金の返済を受けるのは最初」の限界資金供給者とみなされ、サイレント・パートナーとしての機関投資家の立場に甘んじていました。
機関投資家として生命保険会社が積極的な行動をとるようになったのは、日本経済が二度にわたる石油危機を経験した後の一九七〇年代半ば以降のことでした。
そして一九八〇年代に入り、その資金量が飛躍的に増加するにつれ、生命保険会社の投資動向が国内的にも国際的にも注目されるようになってきました。
そのことを象徴的に表している事象の一つが、一九七〇年代から八〇年代にかけて生命保険会社が海外投融資を活発化させていったことです。
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